次の日の朝。

高瀬くんは教室へ資料集を持って来てくれた。

「本当助かりました、ありがとうございます」
「いいよ、和己の後輩は私の後輩だもんね」

あはは、と笑って差し出された資料集を受け取る。

「じゃあ、これで」
「うん、気が向いたらコンビニまた寄ってね」

ほんの少し言葉を交わして高瀬くんは自分の教室へ戻っていく。席に着くと、和己が笑顔で近寄ってきた。

「なんだよ、準太俺にはあんな丁寧にお礼の挨拶なんてしないのに」
「知らないっつの。いいじゃん懐かれてる証拠と思えば」
「いや、あいつ絶対お前に惚れたって」

和己の言葉に飲みかけたお茶を思わず吐き出しそうになった。何を言い出すんだコイツ、

「だってさー、準太昨日練習終わった後更衣室で俺にお前のこと聞いて来てたんだぞ、絶対気があるって」
「何々、何の話ー?」

呆気に取られていると後ろから友達の佳代が話に加わってきた。

「や、うちの野球部の2年に高瀬っているだろ?そいつがこいつのこと「黙れ和己」」

ぎろりといつの間にかちゃっかり隣の席に腰掛けている和己に視線を移す。
佳代は佳代で高瀬ってあの高瀬準太!?ピッチャーの!?と血相を変えて叫び、おかげでクラス中の視線がこちらに向き(特に女子)焦る。しかし天の助けと言わんばかりに予鈴が鳴り、古典の先生が入って来たためみんな慌てて自分の席に着き始めた。和己も渋々と言った様子で前の方の自分の席へ戻っていく。


「(ねぇ、どういうことよ)」

授業中とんとんと肩を叩かれて、佳代から小さい紙切れを渡された。開いてみるとそこには見慣れた佳代の字が。はぁ、と溜息をついて黒板から目を外して紙切れに返事を書く。

「(昨日和己に頼まれて資料集貸しただけだよ)」
「(うそ!じゃあ一目惚れされたってこと!?)」
「(ち が う !)」

結局私たちは授業が終わるまでそんなやり取りをして、佳代はふてくされた表情でつまんないわねー、と机の上に突っ伏した。


「よ、お前らさっき何してたんだよ」
「あー、見てたの、和己」
「だってが高瀬くんとは何も関係ない!って言い張るんだもーん、つまんない!」
「いや、だから準太は絶対お前に惚れた」
「なんでわかるのよ、ただ話の種に聞いただけじゃないの?」

そうそう、きっとそうだよ。だいたいあのモテモテ高瀬くんがそんな簡単に人に惚れるわけないだろうに。(勝手な予測だけど)

「でもなぁ、」

和己も往生際の悪い。ついに佳代が痺れを切らして何て聞かれたの?と和己に聞いた。すると和己は少し声を潜めて、一呼吸置いてから、


さん彼氏いるんスかねー、なんてしつこく聞いて来るか?普通」

視界が、廻った気がした。



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