「いらっしゃいませー」

自動ドアが開くのにあわせてデジタル音が鳴る。私は奥の方にあるサンドイッチやらおにぎりやらの整理をしていた。


このコンビニでバイトを始めたのはつい2ヶ月ほど前のことだった。
高校に入ってから部活にも入らず、かと言って勉強するわけでもない私はもっぱらバイトに精を出していて、一年の頃から家の近くの喫茶店でバイトをしていた。
しかし春休みに入る少し前、もともと羽振りのあまり良くなかったそこがついに潰れてしまい、私は新しい働き口を探して彷徨った結果学校のすぐ近くのここで働くことに決めたのだった。
それからというもの、私はほぼ毎日学校帰りの夕方から夜にかけてここで仕事をさせてもらっている。稼いだお金はそのまま夢のキャンパスライフへ向けてこつこつ貯金。我が家はあまり裕福とも言えない家庭なので、大学に進むためにはこうして少しずつでも貯金をしていかなければならない、ということだ。


「おねーさん、レジお願いします」

はっと我に返って、慌ててレジへ向かう。
お待たせしました、とマニュアル通りの言葉を発しながら顔をあげると、そこには同じ学校の生徒、しかも学年が違う上に接触すらない私が知っているほどの、超有名な野球部のピッチャーがいた。



[戻:][進:]