期末試験も終わって一週間、教室の隅に貼りだされた学年強制補習者の名前をちらりと見る。
俺はいいとして、三橋や田島は案の定ひっかかっていて溜息を吐いた。あいつら、本当に大丈夫なのだろうか。

他に野球部で引っかかってるやつはいやしないかと、俺は立ち止まり上から名簿をざっと眺める。
補習者自体は非常に少ない。すぐに一番下の名前まで来てしまった。

しかしその一番下の名前、それを見た瞬間に俺は思わずあっと声を出しそうになり、慌てて口を押さえることになる。


「……?」
「ん?」


私がどうした?と背後からいきなり声をかけられて俺はもう一度驚いて肩を震わせた。


「お前、いつの間に……」
「何々、強制補習者ー?ありゃ、私入ってるし」
「………お前、中間学年4位とかほざいてなかったか?」
「いやいや!それは本当だよ!今回だけたって!」
「嘘だろ」
「ひどっ!信じてよ!ていうかさ、阿部、補習前に勉強教えてよ」
「は?何で俺が」
「お願い!そもそも、今回こうなっちゃったのは阿部のせいでもあるんだからさ」
「責任転嫁か、重症だな」
「重症はどっちだ、鈍感」
「わけわかんねー」


だんだん言葉が喧嘩腰になっていく。最終的にはわなわなと肩を震わせて踵を返し教室を出て行ってしまった。
あ、おい、と反射的に声をかける寸前、彼女が振り向きざまに叫んだ言葉を俺は一生忘れないだろう。




「、超鈍感なやつのことばっか考えて何も手につかなかったの!」



きみはそれを愚かだと笑うだろう