「ねぇねぇ老子、」 「なんだい、」 「もしも、もしもだよ、」 「うん」 「もしも太公望たちが"歴史の指標"に打ち勝つことができなくて、この星が滅んだら」 「うん」 「老子はどうするの?」 そう問いかけながら私は先程老子から太極図をもらって帰ったばかりの太公望の姿を思い出した。小柄な人だ。あの体で妲己や"指標"と向き合って戦わなければならないときがいつか、来る。あの男に全てを背負わせるのだ。人類の命や、仙道の命。そして、この星の命も。 「別に、私はいつも通り寝ているよ」 「え、」 「は?」 「、私、は」 「、」 「?」 「死ぬのが怖いの?」 「、ちが、」 「全ては太公望にかかってる、私たちに何かできる話ではないよ」 「違うの、老子、」 「?」 「怖いのは、死ぬことじゃなくて、」 「うん」 「老子と、会えなくなることだよ」 「………」 「だから、もしこの星が終わるときが来てしまうなら、」 「…うん」 「私は老子のそばにいるよ」 「……それは、いつものことではないの?」 「うん、でも私にはそれしかないの」 「?」 「最期に見るのは老子の顔がいいし、聞くのは老子の声がいいし、感じるのは老子の、体温がいい」 「……すごいことを言うね」 「まぁ怠惰スーツは脱いでもらうけどね」 「えー」 「ねぇ、」 「?」 「さっきのは、プロポーズ?」 「………知らない、」 もしもの話 (ずっとそばにいて) |