「ごめん、俺好きな人いるから」



よく晴れた午後、私の恋はたった一言で終わりを迎えた。



ぐすぐすと鼻を鳴らしながら、私は屋上のコンクリートの上にしゃがみこむ。
もうあれから何分経っただろう。返事を聞いた後、今にも涙が零れ落ちそうになるのを我慢しながら無我夢中で体育館裏から走ってきて今に至る。よくまぁそれだけの元気があったものだ、と自分でもある意味感心したりもするけど、問題はそこじゃなくて。


「………好きだったのになぁ」


ぽつりと呟いたつもりの声が予想以上に響いてビクッとする。
チャイムはとっくに鳴り終わった。次の授業は確か古典だ。銀八先生だったらそんなに深く追及もしないだろう。
ごろり、と硬いコンクリートの上に体を寝かせる。涙はまだ止まってくれる気配がなくて、頬の上をぼろぼろと伝い落ちていった。



好きだった、あの人がとても好きだった。
いつから、とか理由なんてものはとうに忘れてしまったけれど、あの声も、体も、心も、全てが欲しくて、だからこそ傍にいたかった。



再びこみ上げてくる嗚咽を抑えようと顔を手で覆うと、屋上の出入り口の方からガチャガチャと音が聞こえた。咄嗟に立ち上がって隠れようとしたものの、一足遅く、扉が開く音がした。(やばい、先生!?)


「……?」
「?うぁ、ひじかた、く、」


聞き覚えのある声に気付いて扉の方に顔を向けると、そこにはよく見知ったクラスメイトの顔があった。


「ってお前どうしたんだよその顔」
「!、あ、これ、は、」


慌てて顔を隠そうとしたけれども、土方くんはずかずかと私のほうに近寄ってきて腕を掴むと、「誰にやられた、」と聞いてきた。


「ちが、これは、」
「違くないだろ、なんで泣いてんだよ」
「ふ、……振られた、の」


だから一人にして、と小声で言うと、土方くんは暫く黙った後、私の腕をそのまま引っ張り抱き寄せた。


「!ひじ、かたく、」
「よかった」
「何、それ、ひどい、」
「ライバルが一人減った」


何が何だか分からなくて混乱しているうちに、土方くんは私の背中に回っている手にさらに力をこめてこう言った。



「好きだ」



私が君に世界をあげよう
(新しい世界が動き出す音が聞こえる)