「あれ、いつの間に来てたの?」

勘ちゃんは襖を開けて自分の部屋にいる私を見てそう言った。

「うん、ついさっき。美味しいお茶菓子を貰ったからおすそ分けに」

ヨーコちゃんに渡しておいたよ、そう言うと勘ちゃんは満足そうにそっか、ありがとう、と呟いて私を抱きしめた。


勘ちゃんとは付き合ってるわけでもなんでもない。
ただの腐れ縁、言い換えれば幼馴染という関係で、ちっちゃい頃から私たちは一緒にいた。
今の私たちはお互いを抱きしめ合うし、キスもする。もう幼馴染、という関係には留まらないにしても決して恋人ではない。だって勘ちゃんは、あの人のことが好きだから。

「勘ちゃん、今日、春華ちゃんは?」
「……多分スギノ様のとこだよ」

おとなしく勘ちゃんの腕に抱かれながら、私はいつもと同じ質問を繰り返す。そして、彼の答えを聞いて私はいつもと同じように落ち込む。
独占欲の強い勘ちゃんにとって、大切な春華ちゃんが勘ちゃん以外の誰かと一緒にいることは、それだけで苦痛なのだろう。
私を抱きしめる腕に力がこもる。

「好きだよ、

勘ちゃんはそう言って私の唇に自分の唇を重ねあわす。
嘘だよ、そんなの。勘ちゃんは私のことなんか見てないくせに。
春華ちゃんに出会って勘ちゃんは余計に私のことを見なくなった。
わかるよ、勘ちゃんは春華ちゃんが好きなんでしょう?勘ちゃんの一番は、私じゃない。春華ちゃんだよ。

「……勘ちゃん、私、もう帰るね」

体に絡んだままの腕をするりと解いて、私は立ち上がって勘ちゃんに背を向ける。

「……ねぇ、
「?なぁに?勘ちゃん」
は僕のこと好き?」

びくり、と体が震える。すきだよ、あいしてる。そういえたら、どんなにいいか。

「僕は、が好きだよ」
「……」
「春華とは違うんだ、そういう好意じゃなくて、のことは、そうだね、愛してる、というのかな」

勘ちゃんはうーん、と腕を組んで考えるそぶりを見せる。
やめて、聞きたくない。お願い、私の心を揺らさないで。

、この世で一番愛してる」

勘ちゃんは私の腕を掴んで顔を見上げる。赤い双眸には私の顔が映ってる。
やめてよ、そんなこと言わないで。

「ねぇ、そろそろ恋人って関係に入りたいんだけどさ、僕」

今のこの関係ってなんて呼べばいいのかな、勘ちゃんは何か企んだような笑みを私に向ける。


「いい加減好きって言ってよ、


この関係に名前を付けるとするならば

(これ以上あなたを信じて傷つくのはいやなの)