「(ブー、ブー、)ハイ、もしもし」
「お、なんだ準太、ちゃんか?」
「誰スかちゃんって!彼女!?」
「あれ、利央知らないんだ?」
「ああ、今部室で着替えてるとこ。寒いから教室にいろよ」
「準サン彼女いたのかよ!何で和サンも慎吾サンも知ってるんすか!?」
「準太も隠してるわけじゃなかったしなァ、一年には伝わりにくいのかなこういうの」
「利央が鈍いんだよ」
「はぁぁ!?」

「わかった、今行くから」

そう言って準サンは俺たちの会話なんてまるで聞いてなかったみたいに(どうせ彼女との電話に集中してたんだろうけどサ!)さっさと着替えを済まして一足先に部室から出て行ってしまった。
気になった俺はそれからこっそり準サンの後を追いかけていって、校門の傍に立っている女の子が準サンに駆け寄ってくるのを見た。小さくて色白な彼女は、予想をはるかに上回って可愛い。何だよ準サンのくせに!
鼻の頭を真っ赤にした彼女はとても嬉しそうに準サンに話しかけ(ああ、あの人はこんな寒い所でずっと待ってたのか)準サンは彼女の手を取ってさっさと歩いて行ってしまった。


「おー、利央戻ってきた」
「やめとけって言っただろ。あいつら見てると何か毒気抜かれるんだよなァ」
「……悔しいけど準サンには勝てねーっスよ」


敵わない憧憬の人
(野球も恋も欲しいもの全部手に入れてる)