「準太さん大変申し上げにくいのですが今晩一晩そちらに泊まらせていただいてもよろしいでしょうか」
「……は?」

大雨の降る中玄関の前に突っ立っている幼馴染を男としてそのまま追い返すわけにもいかず、ちょうど親もいなかったのでひとまず中へ上がらせて話を聞くことにした。

、タオル」
「ん、ありがと準太」

渡したタオルで髪をがしがしと拭く。ていうかおま、雨で制服透けてるし!

「どしたの?準太」
「……ちゃんちょっと服貸してあげるからお風呂入りなさい」
「えー、いいの?ていうかお風呂借りるより泊めて欲しいんだけど!」
「いやとりあえず風呂入って来たら話聞いてやるよ」

そう言ってを半強制的に風呂場へ押し込む。
どうやら服を脱ぐ時にブラウスが透けてることに気づいたらしい。中から「ありがと準太ぁー」というなんとも間抜けな声が聞こえてきた。
こいつは女としての恥じらいとかそーいうもんががねぇのか!

暫くテレビを見たりしながら時間をつぶしていると、電話がかかってきた。

「ハイ、高瀬です」
「あら、早いじゃない準太!」

聞こえてきたのは母の声だった。
なんでも親戚のおばだかおじが入院することになり、弟を連れて親子3人で見舞いに行ったはいいが大雨で今日は帰ってこられない、ということだった。
おいおい、今日俺一人かよ。夕飯どうすっかな。
そんなことを考えていたらが風呂から上がってきた。

「ふー、ありがとね準太!ところで何そんな深刻そうな顔しちゃってるの?(あははー)」
「親が親戚の見舞いで帰れないから晩飯どうしようかと思いまして」
「やったちょうどいい!ご飯作ってあげるから泊めてよ準太!」
「だからなんで!」

まあ約束は約束だからとソファーに座って事情を聞くと、両親が共に出張で帰ってこられないのに家の中に鍵を置き忘れたらしい。

「馬鹿だろ!」
「わ、笑うな!こんなびしょ濡れなかっこで友だちのお家にお世話になるわけにいかないし、だから準太しか、」
「俺ん家はいーのか!」
「だって幼馴染じゃん!」
「関係無いだろ…!」

そういうことだから泊めてください準太さん!ソファーの上で土下座の真似をする(襟元からブラ見えてるっつーの!)を見て、しょーがねーなと溜息を一つついて了承した。
ありがとう準太!助かる!きゃあきゃあと喜ぶを見て俺は一つ聞いてみた。

「なぁ、って女だろ」
「しっ、失礼なことを!どうせ女の子らしくなくてごめんなさいね!」
「や、そういうんじゃなくてな。そんで俺は男だろ?」
「……準太壊れた?」
「怒るぞ…まぁつまり、年頃の男女が夜一緒に過ごして、そういうことになるとか考えないわけ?」

「なってもいいよ?」

固まる固まる。コイツ、今自分が言ったこと分かってんのか。
続けてはさらに、

「だって私準太好きだし!」

と笑顔で返してきた。
どうやら今日は、俺はこいつの幼馴染を卒業する日なのかもしれない。


おさななじみ
(明日からは彼女だからね!)