、仕事だ」
「?、はい」
「置屋に潜伏してもらいたい」



夕飯の後、片付けをしていたを部屋に呼び出し、そう告げた。
の顔は見る見るうちに赤くなり、うつむきながら「……いよいよ、ですか」と消え入りそうな声で呟いた。

痛む心を抑えながら俺は数ヶ月前から攘夷志士たちがそこで密会を繰り返していること、ターミナルの動力部を狙ったテロを計画しているらしいこと、そこには幕府のお偉いさん方も多く出入りしているため騒ぎは極力控えたいと言うようなことをぽつぽつ伝えた。
は始終俯いたまま、黙って俺の話を聞いていた。
大体の事を話し終えて、詳しいことは山崎の奴に聞くように、と言っての方を見るとは涙目になりながら「わかりました」と微笑んだ。


正直、揺らいだ。なんでよりによって自分の好いた女をそんな目に合わせなくちゃならねェんだ。どこか適当な奴を見繕ってくればいいだろう。
そんなこと何度も思ったのに。どうしようもならないことぐらい、わかっているのに。

部屋を出るに向かって「悪い、守ってやれなくて」と呟くとは背中を向けたまま「十四郎さんのせいじゃないですから」と答え足早に去っていった。



嫌われる覚悟
(あいしてる、けれど)