「阿部って三橋くんの彼氏みたいだよね」
「ぶっ!!」

日直で放課後残って日誌を書いていたら委員会から戻ってきたと二人きりになった。
俺としては気になるやつと放課後二人、って中々美味しいよなとか思っていたりしていたのだけど。
突然呟かれた言葉に対し思わず飲んでいたお茶を吹き出した。
はそんな俺を見てやだー隆也くんきたないーとか騒いでいる。
…こいつ自分が言ってることわかってんのか?

…それはどういう」
「だって阿部いっつも三橋三橋って気にかけてるじゃん」

まるで夫婦みたい!はけらけら笑いならそう言った。(いつのまにか恋人から格上げしてんぞ!)(こんな時まで笑顔可愛い、とか思う俺は相当重症)

「はー…三橋くんはいいなぁ素敵な旦那様がいて」
「オイ」
「そういえば阿部って三橋くん以外に好きな子いるの?」

どき、と心臓が大きく鼓動する音が聞こえた。こんなふざけた状況で真剣にお前だ、なんて言えるかよ!(ていうか三橋は女ポジションなのか)

「いや、別に」
「え、意外だねぇ」

どこがだ、と言おうとして口を開きかけると「でもそれならちょっと安心かな!」という声が聞こえた。安心って、

「あっやばいそろそろドラマの再放送始まっちゃう!そんなわけでバイバイ阿部!」
「オイ、」

少し意地悪したくなって教室を出て行こうとするの背中に向かってなんでそんなこと聞くんだよ、と大声で言ってみた。
するとはふわりとスカートの裾を翻して俺の方に向き直り、大声で一言叫ぶとそのまま教室から出て行ってしまった。
教室に一人残された俺はその後混乱する頭で苦労して日誌を書き上げることになる。



別に、理由なんてない
(そう叫んだあいつの顔が真っ赤になっていたのを俺は見逃さなかった)