俺は一人寒さに凍りそうになりながら道を歩く。
もうすっかり日は暮れて、空には所々小さな星が輝いていた。
鞄から鍵を取り出しながら自分の家に向かって足を進める。いや、自分と彼女の家、か。

ドアを開けるといい匂いが鼻をかすめた。
靴を脱いで奥に入ると、彼女は夕飯の支度をしていた。

「あ、おかえり隆也!」

振り向きざまに俺に気付いたは、フライパンの上で何かをかき混ぜながらそう言った。俺はただいま、と呟いてソファーの上に寝転ぶ。

、今日遅いんじゃなかったっけ?」
「途中で千代ちゃんに用事できちゃったから今日はお開き!だからゆっくり夕ご飯でも作ろうかなぁ、って」

今夜は頑張っちゃうよ!動かしている手は休めずに、はこちらを向いて満面の笑顔でそう言った。

「夕飯何?」
「メインはグラタン!」
「おー、いいかも」

俺は起き上がっての後ろにまわり、軽く背中を抱きしめた。
は嬉しそうに鼻歌を歌いながらぐるぐると手を動かし続ける。

「こんな生活、私好きだな」
「……俺も」
「…ずっと続けばいいのに、」

朝起きて隣に好きな人がいて、いってらっしゃいとかおかえりって言ってくれて、一緒に食事したり家事をしたり、夜は二人で同じ布団に潜って眠る。
これを幸せと言う以外に何て呼ぼう。

「…あいしてる、よ、隆也」
「、知ってる、」

振り向いた彼女の唇にキスをひとつ落とせば、は少し赤くなってまたフライパンの上のものをかき混ぜ始める。
この生活がいつまでも続くといい。いつか彼女の名字が阿部になって、俺は父親になって、二人しわくちゃになるまでずっと一緒にいれれば、いい。
そんなことを考えて、俺はの背中をまた少し強く抱きしめた。


ビオトープ幸福論
(つまり、二人一緒なら幸せってことさ)



すみません何か変な方向に空回ってる感がひしひしとorz
素敵な方々に囲まれて本当に幸せです。こ、こんなへたれですいませ……!(…)
企画中皆様の作品をとても楽しみにしております。
ありがとうございました。


♪和希(リアリストの憂鬱)


♭同棲企画様へ提出