「老子、プレゼント頂戴」

確か事の発端はこの言葉だった気がする。
そして今私と老子はなぜか見知らぬ場所で星を眺めていた。

「あのー老子!私確かプレゼントが欲しいって言ったはずなんですけど」
「うん、だからこれがプレゼント」

そう言って老子は後ろから私を抱きすくめて草の上に寝転がった。
当然私も寝転がる形になるわけで、

「いやーっ離してよ老子ー!」
「だめ」
「私はこんなだらだらして聖なる夜を迎えたくないの!」
は私と一緒にいるのはいやなの?」

言葉に詰まる。違うよ老子、私が言いたいのはそんなことじゃなくてね、

「……今日くらいは普通の恋人みたいに過ごしたかったの」
「へぇ?」

きっと今頃世界中の恋人たちは愛を囁きあってるんだろうな。私にはそれが羨ましくて仕方なかった。

「だって老子いっつも寝てるし会うとしたらだいたい夢の中だしデートとかイベントごとには興味なさそうだし」
「うん、その通りだね」

老子は薄く微笑んだ。ああ、やっぱり私は、

「でもそんなあなたといることが嬉しいの」

老子が私を抱く腕に少し力をこめた気がした。後ろから小さく「私もだよ」という声が聞こえた。
きっと今年も、来年も、ずっとずっと私と老子が一緒にいる限り私は普通の女の子のように恋人と手をとって、笑いあって、キスしたり街中を歩くことはないんだろう。
そういうのにはやっぱり憧れるし、羨ましくなったりもするけど、だけど、

「老子以外の人は恋人にこんな綺麗な景色はプレゼントしてくれないよね」
「そうかな?」
「そうだよ」


聖なる夜に
(私はいつものあなたといられるだけで幸せになれるのよ!)