「ごめん、待った?」 もう辺りもすっかり暗くなり、星が1つ2つ輝きだした頃に彼はやってきた。 「ううん、委員会さっき終わったとこだし。お疲れさま」 「そっか、よかった」 ふにゃりと笑う顔が可愛い。付き合って一ヶ月ちょっと、暗い中校門で彼を待つのにも大分慣れた。もう夏は始まっているのだ。彼女としては一緒に帰れるだけでも幸せと思うべきだろう。 「帰ろっか」 「うん、帰ろう」 「手、繋いでいい?」 「いいよ」 いつもの会話、いつもの道。そんな些細な日常も嬉しく感じてしまうのはやっぱり好きだからなのだろうか。少し骨ばった、それでも私よりずっと大きい手をぎゅっと握りながら歩き出す。 付き合い始める前まで、私たちは本当にごく普通の友達だった。 私にとって彼は女友達のようで、彼にとってもきっと私は男友達のようだっただろう。同じクラスというだけの、簡単な友情で結ばれた関係。ただ、それだけだった。 きっかけはこれまた普通に彼からの一通のメールだった。そこに書かれていた言葉を見たとき、本当にその時、初めて私は彼を1人の男性と意識することになったのだ。 「水谷、今日隣のクラスの村山さんに呼び出されてたでしょ」 「!、なんで知って、」 「田島情報」 「〜!!、お、俺はだけだよ!?」 「ハイハイ」 笑いながら軽くあしらうと水谷はピタリと足を止めていきなり真剣な表情でこちらを向いた。 「は?」 「ん?」 「は俺のこと好き?」 「…、多分」 「なんだよ多分って!超傷つく!」 明らかにショックを受けた顔をして彼は2、3歩よろめく。うん、仮にも彼女にそんなこと言われたら誰だって傷つくか。 「ごめんごめん」 「…ショック」 「だって本当のことだもん」 「…じゃあなんで俺と付き合ってんの」 「一緒にいたいから」 さらりと軽く答えると水谷はそのまま硬直して顔を真っ赤に染め上げた。忙しいなぁ、くすくすと笑うと「それは反則だっ!」と叫ばれる。でも本当のことだから仕方ない。 「私中学女子校だったから男の人と接点てなくて、」 「うん、」 「正直恋とか好きとかどうでもよかったし、そういう出会いもなかったから」 「…」 「でも、」 「?」 「水谷に付き合ってくれって言われたときは嬉しかったよ」 これも本当。どういう表情をしたらいいか分からないからとりあえず笑顔でそう言ってみる。瞬間、水谷が私に覆いかぶさってきた。 「わ!?水谷!?」 「、」 「え?」 「そういうの、多分好きって言うんだ」 いつものふにゃっとした笑顔で返されると、逆らえない。ああ、そうか。こういうのが、 アイのかたち |