ここ数日ぐずついてた空もようやく青く晴れ渡り、たまった洗濯物を干そうと庭にでてみたらびゅう、と冷たい風が吹き抜けた。 「うっわ、寒!」 つい最近まではあんなに暑かったのに。 そういえば物干し竿のすぐ脇に植えてある紅葉も赤く色づき始めてるし、この前他の女中がいそいそと隊士たちの上着類を取り出していたっけ。 ああ、もう秋なんだ。 かじかんだ指でスカーフを一枚手に取り、しわを伸ばして干していく。 いくら小さい頃からここで働いていたといっても、やっぱり寒い時期の洗濯は気が進まない。 半分ほど干して、すっかり赤くなった手をこすり合わせてみたけれど一向に手の痺れは治まらない。 「……誰か乾燥機買ってくれないかなー」 ぽつりとそう呟くと、後ろから「何贅沢言ってんだお前」とぶすっとした声が聞こえた。副長だ。 「…市中見廻りですか?」 「あぁ、今帰ってきたところだ」 冷えるな、今日は。副長はそう言いながら私の足元に置いてある洗濯かごに目をやった。 「何だお前まだかなり残ってんじゃねぇか」 「寒くて手が動かないんですー」 私クリスマスプレゼントは乾燥機がいいです!と言ったらべしっと叩かれた。 「だからお前は何贅沢なこと言ってんだよ」 「男の人にはわからないかもしれませんけどねーこの時期の洗濯は辛いんですよ!ほら手だって真っ赤!」 そう言って副長に向かって手を突き出すと、何を思ったか副長は私の手を握って、 「痛そうだな」 と息を吹きかけてきた。 「…っ副長もう大丈夫ですから!残りもやらなきゃですから、その」 「あ、悪ィな邪魔して。じゃーまぁ頑張れよ」 副長はそう言って部屋に向かって歩いていった。 何がなんだかわからない。副長にっとってはたいしたこと無いのだろうけど、それでも。 顔が、熱い。息が苦しい。もしかしてこの気持ちは、 呼吸困難(近づいただけで息が止まりそう) (翌朝私の枕元にはハンドクリームが置いてありました)(期待してもいいですか?) |