「とーしろーくーんあーそびーましょー」
「………………」


朝から玄関のチャイムで起こされてドアを開けてみれば、そこには幼なじみが笑顔で立っていた。



「ほらほら、その様子じゃまだ寝起きだね?健全な若者なら早寝早起きを心がけようよ」
「……何の用事だ………」
「だから十四郎くんと遊ぼうと思って「おいィィィ!!」」



今の時刻は午前7時35分。小学生だってまだ朝の支度をしている時刻だろう。まして夏休みの高校生なら大半が寝ているはずだ。黒いタンクトップに半パンというなんとも涼しげな格好をしたを見て溜息をつく。何でこいつはこんなに元気なんだ。

そんな俺の胸中も知らずに、は「おじゃましまーす」と勝手に(俺の)家の中へ上がりこんでいった。



「あれ?十四郎くんご家族は?」
「一昨日から旅行中。っていうかなんでお前勝手に入ってんだ」
「困ったなーうちの親に回覧板回すの頼まれてたのに」
「人の話を聞けェェェェ!!」



今日は厄日か。早くこいつを追い返してもう一眠りしよう。そうしよう。
そう思って頭を押さえながら顔を上げると、いつの間にかは困ったな困ったなと呪文のように繰り返しながらどこから持ってきたのかかき氷器を片手に台所でうろうろしていた。



「ちょっお前何してんの!?」
「見ての通りかき氷を作って差し上げようと」
「いらねぇ!!っていうかさっさと帰れ!!」
「まぁまぁ、もうすぐ出来上がりますからねー」



しゃりしゃりと氷を削り始める傍若無人な幼なじみを見て、俺は諦めてソファに座り込む。昔から俺はこいつに振り回されてばかりだ。



「十四郎、何味がいい?」
「マヨネーズ」
「はいはいメロン味ね」
「お前ェェェ!!」



少しして、出来ましたよー、とが2つの透明な器を持って近寄ってきた。片方には赤、片方には緑に染まった氷が入っている。



「はい、十四郎の」
「ん、」



俺に緑の器を渡すと、は早速俺の隣に座って氷をシャクシャク食べ始めた。俺もゆっくりと緑のそれを口に運ぶ。




「んー?」
「何でここにいるんだよ」
「さっき言ったでしょ、回覧板回しに来たのー」
「じゃあなんでうちで氷食ってんだよ」
「十四郎くんと遊びたかったから!」
「マジでか……」
「それに暫く会ってなかったしね。淋しかったでしょ?」



私に会えなくて!そう笑うに「それはお前だろ、」と囁いて右目にキスを落としてみた。
空になった器がカラン、と涼しい音を立てて転がる。目を見開いたの顔。体の熱は冷めない。これはきっと、



夏だからだ
(熱に浮かされたケモノ)