今日は朝から雪だった。 朝食の片付けを終え、雑巾やバケツやらを抱えて縁側を通ると庭には既に真っ白な雪が積もっていた。 まだ誰の足跡にも汚されていないそれは私の好奇心をくすぐるには十分すぎて、私は掃除用具を廊下に置いて縁側の下にあった下駄をつっかけその白を踏みつけた。 綺麗なものを乱す快感、というのか、私は真っ白な雪の上に一番に足跡をつけたがる子供だった。 地面に張った氷も一番に割りたい。それらは毎年私の心を弾ませて、寒くて辛い冬の到来を待ちわびてしまう。 もう大人とも言えるようなこの年になった今でさえ、それらを見るとわくわくしてしまうのは直らない。 私はゆっくりしゃがんで手のひらに収まるほどの小さい玉を2つつくり、それを重ねて小石と小枝で目鼻をつけた。 「よし、我ながら沖田さんそっくり」 「何してんですかィ」 「!」 ばっと振り返るとそこには本人。沖田さんは縁側に腰掛けるとガキじゃねーの、と声をかけた。 「す、好きなんです、雪!」 「いつまでもそんな所にいたら風邪引きますぜィ、今年の風邪はタチが悪いそうで」 「……大丈夫です」 「俺に心配させといてそれを断るたァいい度胸してんじゃねーか」 沖田さんはすっくと立ち上がってこちらへ歩いてきた。 「お、沖田さん!足、裸足……!」 「この雪の塊が俺かィ?」 「あああ忘れて!忘れてください!その、これは!」 しどろもどろ弁解をしようとしている私なんて眼中に無いみたいに、彼はこれまたさっきの私のように手のひらで雪を丸めて2つ重ね、目鼻をつけて私の作った沖田さん雪だるまの隣に置いた。 「」 「ええ!?」 2つの雪だるまは身を寄せ合うようにくっついて、降り積もる雪を受けていた。 「仕事しますぜィ」 「その言葉副長が聞いたら泣いて喜びます、よ!?」 ふわり。体が持ち上がる。沖田さんは私を抱き上げてさくさくと小気味よい音を立てながら縁側へ向かい、床に上がった。 「お、きたさ、あの、足、」 「に風邪引かれたら俺が困りますんでねィ」 「!」 「さーて仕事に戻るとしますかィ」 沖田さんは何事も無かったかのように自室の方へ足を進めて行った。 庭に今も積もる雪の上には、まるでさっきのことは夢ではないというように2人の足跡が重なっていた。 雪色 (ますます冬が好きになれそうな予感) |