それは空がとても綺麗な日だった。

目を開けると俺は地面に横たわっていた。
周りには大量の屍、血、血。仲間も天人も入り乱れたそれが目の前に広がっている。
不意にずきり、と肩が痛んだ。先ほど切りつけられたそれは予想以上に深いらしい。

「、…、」

気づけば自然と口から名前がこぼれ出ていた。莫迦か、あいつがこんな惨状にいるわけないのに。
隠れていろと言った小屋は見つかっていないだろうか。勝手に様子を見に出てきてはいないだろうか。
そうこう考えているうちにも肩口から血はどんどん溢れ出ていって、意識がかすみ始めるのが自分でもわかった。

俺も、ここまでなのか。最後に、会いたかった。せめて、無事を確かめたかった。波乱の世、どうか、あいつだけは生き抜いて、「小太郎!」

声が聞こえたとき、自分の耳を疑った。まさか、そんな、

「小太郎……!」

は泣きながら俺の元へ駆け寄ってきた。

「……なぜ、ここに…隠れていろと、あれほど、」
「銀時が来たの。ヅラを見失った、今頃どこかでくたばってるかもしれない、って、」
「まったく、あいつは………」

生きててよかった、ぼろぼろと涙をこぼしながらは言った。

「ここに来るまで、死体がいっぱい転がってて、天人も、みんなも、全部死んじゃってて、こわくて、」

共に未来を語り合った仲間たち。そこら中に転がっている死体たち。同じものだ、なんて。

「……なぁ、、こんなことを言うのは武士として失格なのは分かってる」
「…、なぁに、小太郎、」
「死にたく、ないんだ」

志半ばで去っていった仲間たち。せめてもの弔いに、彼らの遺志を果たしたい。

「今は、まだ、死ねない、こんな中途半端に死んだら、向こうであいつらに合わせる顔が、ないんだ」
「……うん、」


「死なせないよ、私まだ小太郎に日本の夜明けを見せてもらってないもの」
泣きはらしてぐしゃぐしゃになった顔をほころばせては言った。

「帰ろう、小太郎」

そして俺たちは歩いていく。その先に待っているであろう幸福を信じて。



(いつか、きっと君と笑顔で暮らせる未来が来る)