「局長!なんですかこの大量の紙くず!」 「ギャァァァ!!ちょっと何勝手に人の部屋の押入れあさってんのちゃん!ていうかそれ紙くずじゃなくて俺のお妙さんへの愛の「捨てますね」ちゃァァァん!!」 ハァと私は溜息を付いて、局長に「大体のごみは処分しましたからあとは自分で片付けてくださいね!私次のお部屋行きますから!」と告げて部屋を後にした。(障子の奥から「だからごみじゃないってばァァァ!」って局長が叫んでるのが聞こえたけど無視!) お正月を迎えるにあたって大掃除を始めたはいいけど、やってもやっても片付かないのはなんでなんだろう。 クリスマスの翌日から始めたのに、日付はいつの間にか大晦日。 廊下とトイレを一通りきれいにして、隊士たちの部屋に各自のごみを出してもらおうと巡回し始めたらどこもかしこもまだ片付けどころか書類すら終わってない状態で、仕方なく一部屋一部屋軽く掃除をして回ることにした。 隊士たちの部屋からはお菓子やらゲームやら(副長に言ったら切腹させられるよ!)、山崎君の部屋にはミントンのシャトルが部屋のいたるとこから出てきたし沖田さんの部屋はわら人形とか明らかに呪術系のものやら途中で放棄したらしい書類やらでもはや足の踏み場も無くなってた。 信じていた局長の部屋だってお妙さんという方へのポエムやら手紙やらプレゼントで埋め尽くされている始末だったし。 「あとは副長の部屋かー…」 マヨ的なもので埋め尽くされてないといいんだけど。やばい自分で想像して気持ち悪くなった! 副長の部屋の前までたどり着き、おそるおそる「副長?です。お掃除に参りました」と声をかけた。 「おー、入れ」と中から声が聞こえて、「失礼します」と恐る恐る障子を開けると、何てことはない、普通の綺麗な部屋だった。(き、奇跡!) 「悪ィな、今掃除まで手ェ回んねェんだ。適当にやっといてもらえるか」 副長は机に向かったまま片手をひらひらと振ってそう言う。 「別にいいですよー。みなさん忙しそうですからこちらから出向くことにしたんです」 「まぁ、その方が断然効率いいな」 他愛もない言葉を交わして、私は早速掃除に入る。 他の部屋と違ってものも散乱してないし、とりあえずいつものように畳を軽く拭いて障子のほこりを取るぐらいでいいだろう。 黙々と畳の目に沿って雑巾を動かしていると、ふと押入れの扉が少し開いているのに気づいた。 なんだろう、と副長が机に向かってるのを確認してそっと扉を開けてみる。すると、そこには、 「指輪!?」 「はぁ!?」 まずい、思わず叫んでしまった。 だって、あの副長が。鬼と呼ばれた副長が、指輪。 副長、もてるもんね。そりゃ女の人の一人や二人、 ぐるぐると混乱してると副長がそれこそ鬼のような形相で「返せ!」と迫ってきた。(やばい、殴られる!?) 「キャァァァ!ごめんなさいごめんなさい副長!」 「いいからそれを渡せ!!」 必死に後ずさりしながら謝ったが、副長に腕をつかまれて、もうだめだと目をつぶった。 しかし、いつまでたっても予想していた痛みは訪れない。 びくびくしながら目を開けると、そこには顔を真っ赤にしてうずくまってる副長がいた。 「副長…?」 「んだよ、勝手に見つけやがって」 いや、話の意味がよく分からないんですけど。 「が、好きだ」 私の頭は一瞬で真っ白になる。 副長が、私を?まさか、そんな、 「年が明けたら指輪渡して、言おうと思ってたのによ、」 何勝手に見つけてんだ、と副長は腕を掴んでいた手を離して私の頭を小突いた。 「………そんなに嫌かよ、」 私の目からは涙が溢れていた。うそ、こんな、 「…嬉しい、です、……ずっと副長が、好き、でした」 そう言うと副長は少し笑顔になって、「そうか、」と私を抱きしめた。 ああ、神様。どうかこれが夢でありませんように。来年も、この人の笑顔が見られますように。 大晦日の奇跡 (副長、もう一回好きっていってください!)(…年が明けたらな) |