私が死んだらあの人は泣くかな、怒るかな。

病院の屋上で私はずっと夜空の星を眺めていた。
ああ、あの美しかった人も今この星のどれかになったのかな。

あの人はとても綺麗な人だった。
今さっきまで話していた人に過去形を使うのは何だか妙な気分だけど、この表現が今の私には一番しっくりくる。
過去、なんだ。
あの人が笑って泣いて皆のことを心配して、幸せだと言ったあの時はもう、過去の話になったんだ。
物腰が柔らかくて、いつも皆を気遣っていた。
初対面の私にも「まるで妹ができたみたい」と病室のベットから頭をなでて、おせんべいをわけてくれた。(辛くて食べるのにとても時間はかかったけれども)
だけどそんなあの人に嫉妬したのも確かで、

土方さんは泣いていた。あの人を思い出すように、忘れないようにおせんべいを食べながらぼたぼたと涙をこぼしていた。
知ってたよ、あの二人がお互いをどれだけ大切にしていたかなんて。
だけどずっと気づかないふりをしていた。認めてしまったら、何かがあふれてしまいそうで怖かったから。

かなしい。だけど、ほっとしてるのも嘘じゃないの。
ごめんね、ごめんねミツバさん。大好きだけど大嫌いだったあなたへ。

頬を冷たい何かが伝う感触が、した。


さよなら紫苑の君、
(君を忘れず、)